経験を語り合いながら一緒に泣き、心配事や不安を分け合う中で人と人とが繋がることの重要性を実感し、その語りの中からそれぞれの喪失体験が様々であることを知りました。夫や家族、大切な人との死別や離別、理解されない放射能への恐怖。中でもコミュニティや仕事、自己肯定感の喪失はその輪郭がすぐにははっきりせず、アイデンティティの喪失として複雑な心理状態を顕在化させました。それぞれがそれまで大切に守ってきたものが突然に壊れ、混とんとした状況が続く中、一方で人生を前に進めようとする当事者の存在もありました。「一人ひとりの背景も価値観もすべて違う」と感じたとき、何を大切にしなければいけないのかが見えた気がします。そして、右も左も分からずに降り立った新天地にも「知り合いがいる」という安心感は何物にも代えがたく、近況を伝えあう人がいるという当たり前のことに日々の生活を支える重要なヒントがあるのだと判りました。