HIRAETH 311 Experience

311体験者の生の声

避難に至る経緯は様々で、津波被災による避難もあれば、原発事故による政府からの指示や事象から判断して自身で避難を決断した人々も少なくはありません。避難者の多くの方は原子力発電事故による放射能リスクによるものですが、311のような初の複合的な災害への対策(政策)はありませんでした。このような状況下で避難を経験した方々の生の声にみなさんも耳を傾けてみてください。

311体験者の生の声

清水理恵(うさぎ)

  • 自主避難
  • 津波

女性 | 50代

避難元:宮城県仙台市若葉区荒浜新
避難先:沖縄県那覇市

今年は「10年目」という事もあり、新聞やテレビの取材を受けた。受け過ぎ、しゃべり過ぎたせいか、その反動は恐ろしく強いストレスとなって襲ってきている。10年経ったから、10年過ぎたから大丈夫という事はなく、PTSDからのストレスたるや震災当時よりヒドイ。半年くらい経つがまだ立ち直れず、来年から取材は断ろうと思っている。大震災以降から語り部となって話を伝えている人に対して「心の中では血の涙を流しているんだろう」と思ったと書かれた記事をみたことがあるが、まったくその通り。何度語っても何年経っても血の涙が流れる。傷は治らない。私もそうだ。貧困など考えたことがなかった2011年の私。それがあれから10年目でますます生活は苦しく、10年経っても「仮住まい」のまま家具も家電もない暮らしが続き、昨今はコロナ禍でさらに逼迫度が増している。天災はいつ来るか分からない。この数年でも大地震・大津波の他にも大雨・山津波と増えている。とにかく自分の生命は自分で守る。「逃げる」ことは「生きる」ことだ。(2021年現在)

カズマ

  • 自主避難
  • 原発事故

男性 | 10代

避難元:福島県郡山市
避難先:大阪府

6歳で被災、福島から遠く離れた大阪へ母と兄と避難。福島に残った父に会いたいという思いを伝えると悲しい思いをさせてしまうのでは?と母に素直な気持ちを伝えることができなかったのを覚えています。何気なく送っていた学校生活も心の中では「本当の自分の思いを出せば仲間外れにされてしまうのでは?」とみんなの機嫌を伺いながらの日々でした。しかし「自分を理解してくれる担任の先生や仲間との出会い」や「自分から逃げずに向き合い、現状を理解し誰かに思いを話すこと」を通して、母や周囲に本音を言えないという「震災に対するトラウマ」が少しずつ克服できたように思います。震災によって人生が変わってしまったけどそれがなければ出会うことのなかった出会いは神様が自分にくれた贈り物なのだと思っています。(2021年現在)

匿名

  • 自主避難
  • 原発事故

女性 | 40代

避難元:東京都
避難先:岡山県

震災の数日前に引っ越しをしてネット環境がなかったので 震災、事故のあと情報がなく、生後一か月の乳児を抱えて不安で家から出られなくなりました。関西の親戚の家へ母子避難、そこでも情報は得られず東京に残った夫からの情報が頼り。その後一旦戻り、大阪へ家族避難、1年後に岡山へ避難しましたが、サポートしてくれる団体があることも知らず、誰にも頼れなかったことは今思えばとても大変な道のりだったなと感じます。避難者登録も3年後くらいにやっと手続きしましたが、それまではこれからの生活のためにいろいろ切り詰めながらも引っ越し費用など大きな出費がかさみ不安だらけでした。数年前にやっと支援団体とつながり恵まれた支援を受ける中で、あらためて震災からの3年はきつかったなと思います。(2021年現在)

さっちゃん

  • 強制避難
  • 地震
  • 原発事故

女性 | 40代

避難元:福島県双葉町
避難先:愛媛県

渋滞や道路の閉鎖、高速道路の通行禁止など前に進まないことや食べ物がないことに困りながらの避難。一番心が締め付けられたことは、飛行機から瀬戸内海を見た時でした。「なんでこんなに海がきれいなんだ。」「なんで、建物が壊れてないんだ。津波がきてないんだ。」という自分ではどうすることもできない抑えられない思いがあふれ出し、きれいな瀬戸内海が憎らしく、被災地との温度差を感じて涙があふれました。その後の生活では「放射能大丈夫?」「お金もらったんでしょ」「まだ、避難しているの?」「募金したんだからお礼言ってよ」など周りの方がもつ避難者のイメージによって心無い言葉、理解不足の言葉をたくさん耳にして苦しい思いをしました。震災から10年、避難先で亡くなった方々のことは忘れられません。病死もあれば事故や自死もあります。誰もが、故郷への思いを抱えながら亡くなっていったのではないかと思っています。二度と同じ思いをする人が増えないよう、これまでの経験を教訓として伝えていきたいです。(2021年現在)

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広域避難当事者の体験と心の内側(本音)

2018年度、2019年度に全国でワークショップを行い当事者の言葉を集め、その言葉を2020年度に質的統合法(KJ法)によって分析しました。この図はその分析によって現れた「広域避難当事者の体験と心の内側(本音)」を俯瞰した姿です。

たくさんの当事者の断片的な言葉が統合することで、「人間」という普遍的な存在が体験した「心の世界像」が浮かび上がっています。この図は現在においても普遍性を持って受け止めることができます。

この図の詳細にご興味のある方はぜひヒラエス会員の申請をお願いします。会員になられた方には可視化した図の解説が記載された冊子を無償で郵送いたします。
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