HIRAETH 311 Experience

会員

京都府支援団体

一般社団法人 なごみ

避難者支援事業統括理事 大塚 茜
相談員 齋藤夕香

2009年の認可外保育園の開所から「たった今、必要な保育を必要な子どもとご家庭に」の想いを胸に、保育事業を展開。2011年3月の東日本大震災の発災によって活動の対象も広がり、宮城県石巻市での子育て支援活動から保育園を立ち上げ、同時進行的に京都府への広域避難者の生活相談支援活動も行う。2021年一般社団法人なごみとして独立。避難者だけでなく地域の困りごとを抱えた方たちの支援にも取り組む。

避難者が失った関係性を回復、構築していくことが重要

東日本大震災は、地震・津波・原発事故と3重の被災であったため、広域避難者という存在を広く生み出しました。広域避難者が宮城県や岩手県の被災者と決定的に異なるものは、コミュニティの喪失、様々な関係の大きな変化であると考えます。つまり、地縁という関係を失い、家族・友人・地域住民などとの信頼関係を喪失したのです。また、無自覚にあった国や自治体への信頼の前提も覆されました。それは必ずしも死別や離別という形ではなくても、避難者から見た世界は、その現れが一変してしまったと言えます。

これまでの様々な関係性が大きく変質した広域避難者が、避難先で孤立し孤独を味わっているということは多くの当事者や支援者が指摘しています。支援者がしばしば「当事者の言えなさ」「言いづらさ」という表現で表すそれは、つまり「私の苦しみをわかってくれる人がいない」ということでもあります。ひとは、わかってもらえない体験を繰り返しているうちに、自らの苦しみを語れなくなってしまいます。

まずは、避難者のお一人お一人が、失った関係性を回復し、あるいは信頼できる関係を新しく構築していくことが、大変重要なプロセスであると考えています。

地元の社会資源との連携が必要だった

私たちは、もともと保育園を運営している団体だったので、地元の社会資源にそんなに詳しくなく、地域との連携を結ぶことに長けていませんでした。活動の初期から、例えば、ボランティアセンターや社会福祉協議会との連携,協力関係を作っておけばよかったと思っています。

この10年で得た経験と知見を次の世代に伝えたい

いつの間にか、東日本大震災から10年が過ぎ、私たちの活動も10年となりました。常に「これでいいのだろうか」と悩みながらの日々でしたが、振り返ってみれば、今までにないことを経験し、正解も前例もない中で、いろいろな手法をトライ&エラーで取り組んできたと思います。その経験・知見をどうか、次の世代に伝え、(来てはほしくないけれども)次の災害では、一人でも多くの人が一日でも早く「ああ、救われた」と思えるような社会であってほしいと願います。

そして、私たちがそういう社会を作っていかなければならないと思っています。だからこそ避難者の経緯や、陥りやすい状況、複合的な困りごとの事例など、やはり避難者に特徴的なことを把握している私たちのような団体は、このことを今後の災害を考える上で知見としていかなくてはなりません。

一人ひとりの現在進行形の困りごとにケースワーク、パーソナルサポート的に対応しながらも、俯瞰的に検討し、知見を蓄積して普遍化していく視点をもてるような専門組織のつもりで活動していかなければならないと思います。

連絡先

一般社団法人 なごみ

〒600-8833 京都市下京区西酢屋町10
Tel: 080-4405-3503
Mail: info@fucco-nagomii.com
https://syadan-nagomi-1.jimdosite.com/